ハムバッキングとは、「逆磁極、逆巻きの位相を利用してノイズを打ち消す」システムである事は広く知れています。外部電源を用いず最も簡便な構造で絶大な威力を発揮したこの構造は全てのピックアップメイカーに多大な影響を及ぼし、これを踏襲した製品は現在市場に溢れかえっています。
出力が高くノイズが軽微、と良い事尽くめに見えるこの構造にもたった一つの大きな欠点が存在します。それは「ノイズを打ち消す」と同時に弦信号の一部をも打ち消してしまう点です。両方のポールピースに同じ振幅が跨っている場合には(図1)効率よく真価を発揮しますがもし、ポールピースそれぞれに逆向きの振幅があればその振幅を持つ信号は打ち消されてしまいます。(図2)そしてこの振幅のみならずこの振幅の倍音(無限にあります)までもがすべて消失するのです。
これを極力防止するためには2基存在するボビンの仕様を適宜変更し「全く同じ能力を持たせない」しか手が打てません。そうかと言って内容に極端すぎる差異を持たせると今度は「ノイズを消す」能力に陰りが見えてしまいます。 ヴィンテージPAFが位相対策のために採っていた手間のかかる「オフセットワインディング」を採用しているK&Tのハムバッキングに、この位相トラブルは最小です。耳の良いギタリスト達が即、違いを感じる大きな特徴となっています。信号損失の少ないこのオフセットワインディングはK&Tハムバッカー全てに採用されています。
ハムバッカーの弱点である距離位相による特定周波数の欠損を補うべく50年代同様の手法を施してある稀有なプロダクトにあり、これにより12次倍音etcの再現改善に劇的な効果があります。
ダイナミックレンジが広く、分離良く、高域特製に優れた世界のトップギタリストが選んだサウンドです。
当初は断線防止等のセフティー策として取り入れられた特殊構造により生じたギャップが結果、ハイレゾナンスを向上させるという奇跡的な二次効果を実現したのがK&T HUMBUCKERです。キャパシタンス効果を激減したために反応が鋭く早くハイミッドの含有量が豊富な至高のサウンドです。
【平行巻】
高出力、高感度を謳った製品の多数が安易にこれを増大し、理論値では大きくともアンサンブルに埋もれやすい、いわゆる「抜けない」サウンドとなっています。
【クロスポイント巻】
K&Tでは綿密な計算と膨大な資料の照合によりいたずらにコイルの巻数を増大させず、磁力との絶妙なバランスを以て「聴こえがいいのに痛くない」トーンを得る事に成功しました。無駄にコイルを巻かない分、ノイズも比例して激減しています。
K&Tは30年間数千個のヴィンテージPICKUPを分解・検証。
時間経過により内部で複雑にコイル密度が変わる経年変化をワインディングで再現する。
巻き始めは超スロー、超ローテンション、続く数百回をスロー、ローテンション。続いてはランダム巻きでのスローミッドテンションを施す事により、50年振りに失われていた高調成分を獲得。手だけで巻く8種類のテンションとスタイルを1000回転ごとに変えていきシングルコイル1本だけで2時間かけて巻き上げ、マグネットとコイルの距離位相による音色の違いをうみだす。
無限のバリエーションの中から年代や機種などで微妙に変わる個性を再現する。
K&TのST、TL、JB、PB用シングルコイルピックアップには、コイルワインディング以前に必ずラッカーディッピングを施しています。
ヴィンテージと同様のこの処理は完成までに大変な時間を要しますが、省略する事の出来ない重要な工程なのです
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ディッピングの目的は2つあります。一つは長年の使用でポールピースが錆び、コイルにまでそれが及んで断線を招く事故をなくすため。もう一つはマグネットとコイルの距離を調整し、サウンドをバランスよく仕上げるためなのです。 キャスティングされたプラスティックボビンでは遠過ぎ未処理では近過ぎます。遠過ぎれば反応が悪く近付きすぎれば耳につく痛い音になります。
オリジナルの持つ豊かなトーンはこの工程抜きでは決して得られません。
特殊ワックスによるポッティングの後スペシャルにブレンドされたラッカーに数回浸して乾燥させています。
ラッカーに適切量配合された酸化鉄が磁界に深い影響を与え、ロングトーン時に持続音の段階的変貌を実現しています。
通常の6弦エレキギターはレギュラーチューニング時に於いて最も低い周波数は約80Hzです。通常細いコイルをハイテンションで多数巻くとこれによって増加する周波数は200Hz前後のローミッドにピークを生じます。あくまでも抜けの良い低音域を求める方には本来の太さをキープしたVL【VERY LOW TENSION】ワインディングがお薦めです。
高域についても同様なことが言え音の広がり感を強調できる13kHzをストレスなくアウトプットし、耳障りな8kHz前後をコントロール可能にするのもVLワインディングです。尚、一部コンテンポラリーシリーズ等にVLを適用出来ない場合がありますので、事前にご確認下さいますようお願い申し上げます。
音響関係者の間では定説となっているヴィンテージコイル、俗にN,O,S,(New Old Stock)と呼ばれるこのマテリアルの特徴は、現在流通している再生銅を使用したコイルに比し結晶レベルの均質、結晶方向の一定性によりあきらかに異なるトーンキャラクターを持っています。
コイルはその製造過程で規定の線径に達した後、被覆材となる塗料のプール槽を通過しこれが乾燥した後にリールに巻き取られ製品となります。 ところが作業はじめ頃と作業終了頃では塗料が溶剤の揮発によって濃度を高めてしまうため必然的に被膜は厚くなってしまいます。 薄い被膜のコイルを使用したピックアップと厚い被膜を使用したピックアップでは、たとえ芯線のゲージが同寸であっても全く異なるキャラクターとなってしまうのはある程度修業を積んだプレイヤーであれば敏感に感じ取れます。
なぜなら厚い被膜はキャパシタンスを上げ難く、芯線の伸張も減少させるために失っていた特定のハイミッドもハイ&ローもあまり損なわずに出力できることにより得られる広いレンジを持つからなのです。
エレクトリックギターが弦振動を電気信号に変換する役目を持つのがピックアップである事は既に周知の事実となっていますが、サウンドの色合い風合いを決定する倍音と、ピックアップが設置されたマグネットがもたらす磁界については従来ほとんど言及されておりませんでした。
デリケートで微細な倍音の特徴である、極めて幅狭な振幅を完璧にレシーブできる複雑な磁力線の放出パターンはヴィンテージトーンを得る上では最大の重要懸案だったのです。
磁力線はマグネットの材質が等しければその放出パターンがどれも等しいと思われがちですが、マグネットの性質とは形成されたエッジ部に本来の磁力線が発生しており平坦な形状からは平坦で大味な磁力線しか放出できません。
ヴィンテージを詳しく観察すればピックアップ表面に露出したポールピースのエッジが比較的粗めな切削により面取りされているのに気付くはずです。これには二つの理由があります。
バルカンファイバー製のボビンにポールピースをインサートする際作業を容易にするため、そしてここからが重要ですが単調になりやすいエレキギターのサウンドキャラクターにあたかも高級アコースティックギターのような粒子の細かい倍音を付加させるためだったのです。
アルニコの着磁はすべて同じと思っていませんか?
実際は意図した磁束密度を均質に得る事は、同極がそれも長さ違いで何本も並立するシングルコイルピックアップに於いては安易ではありません。エレクトリックギターの黎明期には原始的で非能率的、時間とコストでは不利な直流式の着磁機が用いられていました。ところがエレクトリックギターが一般化するのと同時期に着磁機の主流はパルス式に変わっていきました。一瞬で着磁を終了できるこの方式はやがてほとんどのファクトリーで主役となってしまいました。確かに製造コストの軽減には大きく貢献したパルス式ですがどうしても均一な磁束密度をもたせるには旧式な直流式に二歩も三歩も譲らざるを得ません。さらに、ヴィンテージ・ピックアップに使用されているアルニコ・マグネットは、作られた当時から現在に至るまで、ゆっくりと磁力が下がっています。また、それはヴィンテージ・トーンを形成する重要なファクターでもあります。経年変化による減磁量は、マグネットやピックアップの構造、ピックアップの使われ方によっても大きく異なります。
一般的な交流式の着磁機では、構造上飽和着磁(その磁石が着磁出来る限界)しか出来ません。特別な直流式の着磁機を磁気機器メーカーに相談して製作してもらいました。これだと、着磁する際の電流量と時間をコントロールすることで、様々に減磁した状態のマグネットを作り出すことが出来ます。しかし、いったんフル着磁した後に再び磁力を落としていくので、かなり手間がかかります。【56LOM】完璧を期すために形状のフラットな裏面からの着磁を施します。磁極に関しても50年代モデルのキャラクター形成に大きく関係する異方アルニコの特性を生かしたN極トップを採用しています。
STやTLのようにヴァルカンファイバーをボビンに用いたシングルコイルピックアップは、ワインドされたコイルのテンションにより徐々に変形をします。当然コイルもボビンの動きにその形状を変化させてしまいます。
結果、上下方向に「均質でなく」スペースを拡大するのです。これによりピックアップのキャパシタンスが変化し、その経年変化はヴィンテージトーン形成の一因となっています。K&Tではワインド以前にボビンの切削により、経年変化後のコイル形状に内部加工を施しています。豊かな低音域はここから生まれています。
無論これ以上の変形を防ぐためにボビンの固化をヴィンテージ同様のラッカーにより行っています。
K&Tでは失われたそのスペック、まずは「複数のコイルを使用する」点に着目しマグネットポールピースに近い部分にはメタリックなアタックを得られるものを、そして外周部には太さとパワー感を得られるものをワインディングする方法を選択しました。
通常、製造途中でのコイルの変更は量産品では不可能です。
くわえて被覆部分の酸化による断線にも配慮をせねばなりません。
そしてポジションごとに最良の配分比を選択せねばなりませんでした。
最後にこれを生かすために施す磁界のアレンジも見逃すことは出来ませんでした。
これはカスタムシングルコイルのみの仕様です。また特別仕様のK&Tハムバッカーモデルには48~68年に生産されていたヴィンテージピックアップと同仕様のレアコイルとパーツを海外より取寄せて今では再現する事が難しいといわれていたヴィンテージトーンを復刻しています。